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景気回復に明るさが見えないが、大規模な積極財政によって日本経済が回復するというコンピュータシミュレーションがネット上で公表され、話題になっている。(本紙・渡久地明) |
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日本経済復活の会の小野盛司代表が日本経済新聞社の「NEEDS日本経済モデル」を使ってインフレターゲット論で議論されている二〜四%のインフレはどのようにすれば達成できるかシミュレーション実験した。その結果、年間数十兆円に及ぶ大規模な減税を行うと、需要が伸び、さまざまな経済指標は改善し、インフレ率は低いままであること、国債の暴落、円相場の下落が経済に与える影響は小さいという結論を得た。この結果をノーベル経済学賞を受賞したマサチューセッツ工科大学のポール・サミュエルソン教授に送ったところ、流動性のわなから脱却し、需要を回復させることが重要であり、インフレ率は気にしなくてよいというコメントが寄せられた。 |
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シミュレーションは 1.法人税を中心とした減税を行う 2.消費税を中心とした減税を行う 3.公共投資と同時に法人税の減税を行う 4.公共投資だけを行う 5.日銀がETF(株価指数連動型の上場投資信託)を買い株価を上げる、という五つのシナリオを五年間実施する条件で実施。 |
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その結果、インフレ率が三%となるためにはシナリオ1から3までなら六十兆円の減税か財政出動が必要で、シナリオ4では年間五十兆円までの公共投資がシミュレーションの限界で、インフレ率は一・七%、5は日経平均を八万円に固定した場合となることがわかった。 |
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このことから、年間数十兆円の財政出動を行わない限り、日本経済はデフレから脱却できないという結論を得ている。 |
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シナリオ1で消費税をゼロに(十兆円)、法人税を二十兆円減税、所得税を三十兆円減税する総額六十兆円の財政出動を五年間実施した場合の結果を詳しく見ると、GDPは現状の五百三十兆円が五年後には二六・六%増の六百八十兆円に、失業率は二・三%まで下がり、四年間の平均インフレ率は三%で完全にデフレからの脱却が可能になる。民間設備投資は減税しなかった場合の二・三倍に達し、企業の経常利益は二・八倍に拡大、地価は一・八六倍に上昇し、平均株価は二万七千九百円に達するから、不良債権処理も終了させることができる。 |
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国民にとっては五年間で総額三百兆円の減税に加え、給料は一九%も上昇する他、自分の所有している株式や不動産などの資産は一人当たり千万円程度値上がりしているからよいことづくめになる。 |
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このような巨額の財政出動では財政が悪化すると考えられがちであるが、実際には財政赤字が拡大するのは最初の二〜三年間だけで、その後は財政がどんどん健全化することも分かった。財政赤字の額そのものは最初の二〜三年は拡大するが、GDP比で見ると国や地方の債務残高も大規模な財政出動を行うと初年度から少なくなるという画期的な結果となった。 |
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小野氏のシミュレーション解説では国債の暴落、円相場の下落に対する処方箋も述べられているが、割愛する。 |
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小野氏の「NEEDSで行った日本経済復活シミュレーションの解説」など積極財政に関する多数の論文が http://www.tek.jp/p/ などにあり、活発な議論が展開されている。財源には国債などの借金よりも政府貨幣をあてることにより、財政はさらに健全化するとも提言されている。 |
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最後にこのシミュレーションに関するサミュエルソン教授の手紙を紹介すると「大規模な減税が日本経済の著しい回復をもたらすのであればインフレ率が十分高くならないとしても気にしなくとも良い。インフレ率自体は政策の最終目標ではないからだ。重要なことは、流動性のわななどに起因される消費の欠如を取り除くことである」(サイン)というものだ。 |
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