日本経済復活の会
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政府との質疑応答
2006年4月16日
明治大学アカデミーホール
タウンミーティング イン 東京『我が国の財政と国の未来を考える』
出席者 谷垣財務大臣、吉川洋 東大教授、大宅映子(評論家)
【加藤】
 内閣府の試算では、増税はGDPを減らし、その結果債務のGDP比を上げてしまう。むしろ減税を行ってGDPを増やし、債務のGDP比を減らした方がよいのではないか。
【財務大臣】
 増税がよいのか、歳出削減がよいのか、いろいろ議論があるところですが・・・
【加藤】
 違います。減税を行ってGDPを増やして債務のGDP比を下げるべきだと言っているのです。
【財務大臣】
 減税で、将来的にプライマリーバランスが改善していくのか、そんなにうまくいくのか分かりません。
【小野】
 財務省はもっとマクロ経済学を勉強すべきだと思います。昨年も予算委員会で、小泉俊明議員がこの件に関し質問し、減税していけば経済成長率も伸びるし、結果的にはプライマリーバランスが改善するといったシミュレーションも示しております。竹中大臣も勉強しますと言っておられた。毎年経済財政諮問会議で発表される『改革と展望』で示された試算でも、減税をすればGDPが増え、債務のGDP比は減ると書いてあります。
【小野】
 昨年のミーティングでこのこと、つまり増税はGDPを減らし債務のGDP比を増やすこと、そして減税すれば逆に債務のGDP比は減っていくことを述べました。そのとき、吉川先生は、それが本当か内閣府に問い合わせ回答しますと言われた。そして内閣府から私は回答を受け取りました。それによると、確かにそうなる。しかし、それは最初の1,2年だけで、3年目以降は減税で債務のGDP比は増加するのだとのことでした。私は内閣府に電話し、なぜそうなるかと聞きましたら、減税で景気がよくなれば、金利が上がり、国の借金に対する利払いが増えるので債務のGDP比が増えるということでした。そうであれば、日本は永遠に景気を良くすることができなくなるわけです。こんな馬鹿なことはありません。実際、そんなに急いで金利を上げる必要はなく、金利を抑えながら減税をしていけば間違いなく債務のGDP比は減っていくし、景気もよくなっていきます。
【吉川教授】
 小野さんとは、第二ラウンドですね。この段階で私から発言は控えたいと思います。小野さんと内閣府との話し合いに任せます。
【財務大臣】
 財務省はもっとマクロ経済を勉強しろとのこと。よく言っておきます。景気が良くなると確かに金利の動向は大切なファクターになると思います。景気がよくなると金利が上がるから利払いが増えて財政が悪化する。それなら景気をよくすることが悪いことなのかということになりますが、そんなことはないと思います。実質成長率が高ければそれでよいのではないでしょうか。
コメント:
 2度目の質問が許されなかったので、これ以上反論はできなかったが、『実質成長率が高ければそれでよい』という財務大臣の考えには賛成できない。
 第一の理由が実質と言いながら実は実質になっていないという問題がある。日本の場合、実質成長率を高めているのが、マイナスのデフレーターだ。マイナスを引くからプラスになって成長率を押し上げるが、庶民には実感がわかない。デフレーターがマイナスになる大きな要因はパソコン価格等の値下がりだ。実際は値段が下がらなくても、機能がアップしていれば価格が下がったことにしてしまう。去年これと同じパソコンを買っていたら2割高かっただろうという場合、2割値段が下がったことにする。そうすると実質の購買力はアップしたと見なす。しかし、ハードディスクの容量が100ギガから200ギガにアップしても、あるいはCPUが2割早くなったとしても、ワープロやメールしか使っていない多くのユーザにとっては、それは何のメリットにもならない。実質、下がっていないと同じだ。こう考えるとデフレータの定義にはあいまいさが残るし、実質成長率も同様だ。実際、2年前に実質GDPの計算方法が変更され、実質成長率が大幅に縮小した。「実質」とは言いながら、計算方法が変われば大きく変わる実質成長率に、絶対の信頼を置くのは間違いだ。給料が上がらず、税金負担が増え、社会保険料が上がり、石油関連製品が上がる状況で、好況は実感できない。名目GDPが増え、給料が上がってくると人は好況を感じることができるわけで、本当の好況はそこまで待たねばならない。
 第二の重要な点は、名目GDPが上がってくると急速に税収が増えることだ。伸び率は、累進課税などの仕組みから、簡単に計算できる。多くの批判にも拘わらず、財務省は税収の伸びは、名目成長率の1.1倍(税収の弾性値)だとして、様々な試算を行っている。これに対して例えば06年3月30日の日本経済新聞では、1.1倍どころか、10倍くらいになっているではないかと批判する記事が掲載された。どちらの言い分が正しいのか下のグラフを見ればすぐ分かる。少なくとも1.1倍よりはるかに大きいことは間違いない。
名目成長率 vs 税収の伸び
 それだけではない。いつも問題にされているのは、国の債務のGDP比だが、ここで言うGDPとは名目GDPであって、実質GDPではない。名目GDPは伸びなくても良くて実質GDPさえ高ければそれでよいと考えていたら、債務のGDP比を下げることは事実上不可能となる。債務がGDPよりも1.6倍にもなるような現状では、債務そのものを減らすよりGDPを増やす努力をしたほうが、債務のGDP比を下げるにははるかに有効だ。実際06年3月8日の予算委員会で、谷垣財務大臣は債務そのものを減らすのでなく、債務のGDP比を減らすべきだと述べている。名目GDPが伸びれば、デフレに苦しむ日本経済においては実質GDPも伸びてくるというのが内閣府の試算による結論だ。だからこそ、増税でなく減税がよいということになる。
このタウンミーティングに関する日経新聞による嘘の報道(06年4月20日)
16日夕、都内で開かれた小泉内閣のタウンミーティング。財政再建の重要性を訴えるはずが、会場からは減税への要望が相次ぐ予想外の展開に。谷垣はやや面くらいながら「子どもたちの世代にツケを残さないのが政治の一番の責任だ」とひるまず主張した。
実際は財務大臣のそのような発言は無かった!
タウンミーティングの様子は内閣府のホームページで動画として閲覧可能です。
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