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2003年4月7日 産経新聞朝刊
経済紙誌を読む 奇策には自然科学の蓄積
市川アソシエイツ代表 市川周
 全く脱出のめどがつかない「構造デフレ」への戦いに、厭戦(えんせん)気分が立ちこめている中、「イラク戦争」という、これまた見通しの立てにくい戦いに日本経済も引きずり込まれてしまった。
 週刊東洋経済誌(四月五日号)は「イラク攻撃が日本経済に落とす影」なる特集の中で、イラク戦争後のアメリカ経済が大きく後退した場合、世界同時株安から日経平均株価が六〇〇〇円まで下落する可能性があるという榊原英資氏の見解を紹介していた。株価六〇〇〇円の世界とは恐慌前夜と言ってもいいかもしれない。
 この悲観主義は日本経済新聞でも色濃く出ており、三月三十一日の朝刊一面は「底はう景気広がる不安」と大見出しで、利益と減価償却費の範囲内でしか投資をしない企業、不要不急の支出を抑制する消費者それぞれの「縮こまり」志向を報じていた。ではどうするか。同記事の中でも「名目プラス成長へ総力」を発揮すべく諸提言を試みているが、もう何回も聞いたおよそパンチのないものばかりだ。
 幕末、高杉晋作が組織した奇兵隊という非武士集団が維新回天の推進力となった。この「奇」は「奇策」の「奇」でもある。脱デフレの奇策よ出てこいだが、深尾光洋氏が力説するマイナス金利策(国民の保有する現金・預金・国債等の金融資産に物価下落分プラスアルファの税率で課税し、消費行動を駆り立てる)は、金利はゼロより下げられないという通念を打破するもので常識人には奇策と映る。
 最近、もう一つ、すごい奇策に出合った。小野盛司氏の説く財政大出動論だ。財政再建を目指した緊縮増税策は国内総生産(GDP)を細らせ、税収を低下させ、結局は財政をさらに悪化させてしまう。求められるのは大胆かつ大規模な財政出動だという。
 小野氏は毎年三十五兆円の政府支出(公共投資中心)増額と毎年二十五兆円の法人税減税を五年間実施すれば、公的債務残高のGDP比率は大幅に改善、現状維持だと200%に迫っていく同比率を120%台まで低下させられるというシミュレーションをやっている。要は分子の債務残高を減らすという通念を捨て、分母であるGDPの規模拡大に賭けるという中央突破作戦だ。
 この二つの奇策に共通しているのは深尾氏が工学、小野氏が物理学といった自然科学系の蓄積を提案者が持っていること。さらに“窮すれば通ず”ではないが、実行に際しては高杉晋作ばりの政治的エネルギーと勇気が不可欠なことである。小泉首相やれますか。
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